現地レポート

受け継がれる奥田マインド

2022年1月7日

 今年もあと一歩だった。あと一歩でファイナルの舞台に立てたのに、またも決勝戦の壁に跳ね返されてしまった。ただ 2 年連続で準決勝まで勝ち残った男子のチームは彼ら以外にいない。そこは胸を張っていいし、この悔しい思いは間違いなく後輩たちにも受け継がれるはずだ。

「Jr.ウインターカップ2021-22 2021年度 第 2 回全国 U15 バスケットボール選手権大会」の男子準決勝、奥田クラブ (富山) はゴッドドア (兵庫) と対戦し、58-63で敗れた。前回大会でも奥田クラブ (昨年は「奥田バスケットボールクラブ」で出場) は準決勝に進みながら、NLG INFINITY (群馬) に敗れている。そのときは 6 点差の敗北。今回は 5 点差。1 点近づいたとはいえ、やはり決勝戦の壁は厚くて、高かった。

「昨年は先輩たちが最後まで引っ張ってくださって 3 位という結果になったんですけど、今年は自分が 3 年生になったので、後輩たちの思いも背負って最後まで出し切ろうと思っていました。でも自分の力不足で、最後のシュートも自分に託してくれたんですけど、そのシュートも落としてしまって……申し訳ない思いです」
 そう言ってシャツで顔を覆ったのは奥田クラブの #4 高田将吾である。前回大会では 2 年生ながら大会ベスト 5 にも選ばれたチームの大黒柱である。

 そんな高田を含めた奥田クラブのメンバーは、八村塁を輩出した富山市立奥田中学校のメンバーでもある。奥田中学は今夏の「全国中学校バスケットボール大会 (以下、全中)」を目指しながら、北信越ブロック大会の準決勝で敗れて、その道を絶たれている。それだけに今大会にかける思いは並々ならぬものがあった。
「昨年のジュニアウインターカップで 3 位になってから、新チームでは全中も含めて日本一になろうという目標でやってきました。今年こそという思いがあったんです。でも全中も出られなくて、そこからはこのジュニアウインターカップにかけていました」

 結果には結びつかなかったけれども、それでも挑戦しようと立ち上がったことで得られるものもあった。
「夏以降はシュートの確率を上げることだったり、自分にディフェンスが寄ってきたときの対応を重点的に練習してきました。気持ちの面でも、(坂本穰治ヘッド) コーチから『将吾の気持ちがチームの気持ちになるぞ』と言われていたので、最後までしっかり声を掛け続けようと思って、やっていました」
 それは残り時間21秒、5 点のビハインドを背負っている場面でも「まだまだまだ。(試合は) 終わっていないぞ!」とチームメイトを鼓舞し続ける姿でも確認できた。

 高田の成長はそれだけではないと、坂本ヘッドコーチが言う。
「昨年は 3 年生 (現・高校 1 年生) たちがお膳立てしてくれたというか、3 年生が 2 年生の高田将吾という人間を認めていました。今年のポイントのひとつは、高田自身が仲間たちを認められるかどうかでした。そこは認められるようになっていました。1 つ下の加古 (誠一郎) へのアシストがいくつかあったことからも、それはわかります」
 接戦になれば、どうしてもチームメイトは大黒柱に頼ってしまう。それがひとつの原因となって全中を逃しているだけに、夏以降、チームメイトたちも必死に努力を重ね、全国で戦える選手へと成長していった。そんなチームメイトたちを高田が認めることで、奥田クラブはより強い結束力で準決勝まで勝ち上がってきたのである。
「ウチはいろんなスキルの情報も伝えますが、奥田クラブの根源にあるマインドを伝えて、高校でさらに高みを目指す。一番大事な心の伝授をするバスケットにしたいと考えているんです」

 目指していた決勝戦には手が届かなかった。しかし高田が 1 年間示してきた姿勢は、間違いなく後輩たちにも伝わっている。この試合でチームトップの18得点をあげた加古が言う。
「将吾さんは手を伸ばしても届かない存在だったけど、チームを引っ張る姿やチームに声を掛けて盛り上げる姿、プレーで引っ張っていく姿がとてもかっこよかったし、憧れの存在でした。手を伸ばしても簡単に届くようなことはないんですけど、自分なりにチームを引っ張っていく方法を見つけて、来年も絶対にここに戻ってきたいと思います」

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